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眠れない原因は体の病気かも?いびき・むずむず脚症候群・甲状腺のサイン【前編】|新宿 心療内科 シティライトメンタルクリニック

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「眠れないんです」という相談を受けた時。精神科医になってしばらくは、正直に言えば、そこまで丁寧に考えていなかった時期もありました。眠れないなら眠れるようにすればいい。シンプルな話のように思えたのです。

ある時期から考えが変わりました。眠れないと訴えていた方が、実は寝ている間に何十回も呼吸が止まっていた。夜中に目が覚めるのは、脚の不快感のせいだった――。そうした経験が重なるうちに、「眠れない」という言葉は、それ自体が答えではなく、何かを知らせるサインなのだと考えるようになりました。

この記事は全3回のシリーズで、「こういう状況だったら、これかもしれない」という形で、睡眠の不調の裏にある原因を整理していきます。前編のテーマは「体の病気」です。中編では心の病気、後編では体内時計のずれや生活習慣、そして全体のまとめをお伝えする予定です。

ひとつだけ最初にお断りしておくと、この記事は自分で診断をつけるためのものではありません。当てはまる項目があっても、それだけで病気だと決まるわけではありません。「相談するときのヒント」くらいの気持ちで読んでいただけたらと思います。

夜中にベッドの上で目が覚めてしまい、スマートフォンの時計を見つめている若い人のイラスト

眠れない原因は大きく4つ――「心」「体」「体内時計」「生活習慣」

睡眠の病気は、国際的な分類(睡眠障害国際分類 第3版改訂版:ICSD-3-TR)では、不眠症、睡眠中の呼吸の病気、日中に強い眠気が出る病気、体内時計の病気、睡眠中の異常な行動、睡眠中の脚などの動きの病気……と、いくつもの種類に分けられています[1]。とはいえ、名前を並べてもピンとこないと思いますので、このシリーズでは原因をざっくり4つに分けて考えていきます。

  • 体の病気:睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、甲状腺の病気など(今回・前編のテーマ)
  • 心の病気:うつ病、双極性障害、不安症、PTSDなど(中編のテーマ)
  • 体内時計のずれ:眠くなる時間そのものが後ろにずれている状態(後編のテーマ)
  • 生活習慣・薬や物質:寝酒、カフェイン、服用中の薬、昼夜逆転など(後編のテーマ)

大事なのは、これらが「どれか1つ」とは限らないことです。むしろ、2つ3つが重なっていることのほうが、外来では珍しくないように感じます。このことは、後編で改めて触れます。

睡眠の不調の原因を体の病気・心の病気・体内時計のずれ・生活習慣の4つに分けて示した図

「こんな状況だったら、これかも」――まずは体のサインから

ここからは、よくある状況ごとに、考えられる原因を見ていきます。「あ、これ自分かも」と思うものがあれば、少しだけ意識して読んでみてください。

いびきを指摘される、寝ても寝ても日中眠い――睡眠時無呼吸症候群かも

こんな状況ありませんか? パートナーや家族から、いびきがうるさい、寝ている間に息が止まっていると言われた。朝起きると頭が痛い、口がカラカラに乾いている。7時間、8時間と寝ているはずなのに、昼間に強い眠気がある。夜中にトイレで何度も起きる。

考えられること: 睡眠時無呼吸症候群(SAS:寝ている間にのどの空気の通り道がふさがり、呼吸が止まったり浅くなったりをくり返す病気)の可能性があります。本人は「眠れていない」自覚がなく、「なぜか疲れが取れない」「途中で何度か目が覚める」くらいにしか感じていないことも多いです。

見分けるヒント: 「太った中年男性の病気」というイメージが強いかもしれませんが、若い方や、やせている方でも起こることがあります。アジア系の人は欧米系の人と比べて、肥満の程度が軽くても、あごが小さい・下あごが後ろに引っ込んでいるといった骨格の特徴によって、睡眠時無呼吸が起こりやすいことが報告されています[2]。また、お酒も要注意です。飲酒量が多い人は、睡眠時無呼吸のリスクがおよそ1.25倍になるという解析結果があります[3]。お酒にはのどの筋肉をゆるめる作用があるため、飲んだ夜ほどいびきがひどくなる、という方は少なくありません。

ここで気をつけたいのが、「眠れないから」と自己判断で睡眠薬や寝酒に頼ることです。種類によっては呼吸を抑える方向に働き、無呼吸をかえって悪化させてしまうおそれがあります。睡眠時無呼吸は放っておくと高血圧などの体の病気にもつながりうるため、いびきや呼吸の停止を指摘されたら、一度きちんと調べてもらうことをおすすめします。

夜、横になると脚がむずむずする――むずむず脚症候群かも

こんな状況ありませんか? 夕方から夜、横になってじっとしていると、脚の奥のほうがむずむずする、虫がはうような、なんとも言えない不快感がある。脚を動かしたり歩いたりすると楽になるけれど、またじっとすると戻ってくる。そのせいで寝つけない。

考えられること: むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)の可能性があります。これと関係が深いものに、寝ている間に脚がピクッピクッと周期的に動く「周期性四肢運動」があり、こちらは本人がまったく気づかず、「なぜか夜中に目が覚める」「ぐっすり眠った感じがしない」とだけ感じていることがあります。

見分けるヒント: むずむず脚症候群は、体の中の鉄の不足と深い関係があります。国際的な治療ガイドラインでは、血液中のフェリチン(体にたくわえられている鉄の量の目安)が75 µg/L以下の場合に、鉄を補う治療を検討することが推奨されています[4]。ふつうの健康診断で「貧血はない」と言われていても、たくわえの鉄が減っていることがあるのがやっかいなところです。月経のある女性、無理なダイエットをしている方、妊娠中の方などは、特に気にかけておきたいところです。

もうひとつ知っておいてほしいのは、抗うつ薬の多くが、むずむず脚の症状を引き起こしたり悪化させたりする可能性がある、と報告されていることです[5]。眠れない理由がむずむず脚なのに、それに気づかれないまま別のお薬が使われると、かえって眠りにくくなることがあります。ただし、今飲んでいるお薬を自己判断でやめるのは危険ですので、気になる場合は必ず主治医や薬剤師に相談してください。

夜、布団の中で脚の不快感に悩まされ、パートナーにいびきや無呼吸を指摘されている場面を示すイラスト

動悸、汗、体重の変化もある――甲状腺など体の病気かも

こんな状況ありませんか? 眠れないことに加えて、動悸がする、汗をかきやすい、食べているのに体重が減る、手が震える。あるいは反対に、だるい、寒がりになった、むくみやすい。

考えられること: 甲状腺の働きが強すぎる・弱すぎる病気などの可能性があります。甲状腺ホルモンが多すぎると体が「アクセルを踏みっぱなし」の状態になり、眠りにくくなることがあります。

見分けるヒント: ほかにも、胸やけで夜中に目が覚める(胃酸の逆流)、鼻づまりやぜんそくで息苦しい、かゆみや痛みで眠れない、夜間に何度もトイレに起きる……といった「体の不快感」が、眠りを妨げていることもあります。こうした原因の中には、血液検査などで確認できるものも少なくありません。

前編のまとめ――「体のサイン」を見逃さない

睡眠時無呼吸、むずむず脚症候群、甲状腺の病気。どれも、「眠れない」「日中眠い」という訴えの裏に隠れていることがある、体の病気です。共通して言えるのは、原因を見分けないまま睡眠薬や寝酒でしのいでしまうと、かえって症状を悪化させることがある、ということです。

次回の中編では、「心の病気」が睡眠にどう現れるかを見ていきます。うつ病や双極性障害では、気分の落ち込みよりも先に「眠れない」というサインが出ることが少なくありません。

参考文献

  1. American Academy of Sleep Medicine. International Classification of Sleep Disorders, Third Edition, Text Revision (ICSD-3-TR). Darien, IL: AASM; 2023.
  2. Lee RWW, Vasudavan S, Hui DS, et al. Differences in craniofacial structures and obesity in Caucasian and Chinese patients with obstructive sleep apnea. Sleep. 2010;33(8):1075-1080.
  3. Simou E, Britton J, Leonardi-Bee J. Alcohol and the risk of sleep apnoea: a systematic review and meta-analysis. Sleep Med. 2018;42:38-46.
  4. Allen RP, Picchietti DL, Auerbach M, et al. Evidence-based and consensus clinical practice guidelines for the iron treatment of restless legs syndrome/Willis-Ekbom disease in adults and children: an IRLSSG task force report. Sleep Med. 2018;41:27-44.
  5. Kolla BP, Mansukhani MP, Bostwick JM. The influence of antidepressants on restless legs syndrome and periodic limb movements: a systematic review. Sleep Med Rev. 2018;38:131-140.

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