求人

クリニックからのお知らせ

「ノイローゼ」ってどういう意味? 精神科医が”消えた病名”の正体をお話しします|新宿 心療内科 シティライトクリニック 心とからだ

【心療内科・メンタルクリニックも診療中】
不眠・うつ・ADHD・発達障害など、当日予約・夜22時まで対応。

詳細を見る →
p>最近ノイローゼになっちゃって…皆さん一度は口にしたことないですか?

医学的な診断名としては、もう何十年も前に姿を消しているはずの言葉なのに、診察室でも、日常の会話でも、今なおごく自然に使われています。「ノイローゼ」とは、いったい何なのでしょうか。今日は、この言葉の正体について、少し歴史をさかのぼりながらお話ししてみようと思います。

古い医学書のページからドイツ語の文字が浮かび上がるイメージイラスト

「ノイローゼ」と「神経症」は、実は同じもの

ノイローゼは、ドイツ語のNeuroseをそのままカタカナにした言葉です。日本語に訳すと「神経症」になります。つまり、ノイローゼ=神経症と考えて、まず間違いありません。日本では、精神分析の考え方が盛んに紹介された時代に、この言葉が医学用語として、そして同時に日常語としても、広く定着していきました。

かつての精神医学は、病気を「原因」で3つに分けていた

神経症がどういう位置づけの言葉だったかを理解するには、少し昔の精神医学の考え方に触れておく必要があります。20世紀前半のドイツ精神医学、なかでもクルト・シュナイダーに代表される考え方では、精神疾患を大きく3つの原因別のグループに分けて理解する枠組みが主流でした。

シュナイダーは、統合失調症・躁うつ病(現在の双極症にあたるもの)・てんかんを、はっきりした原因は分からないものの体質的な基盤を持つと考えられる「内因性」の三大疾患群として考えていました。これに対して脳や身体の病気に由来する疾患を「外因性」として区別しました。そして、このどちらにも当てはまらず、心理的なストレスや葛藤が原因と考えられる状態を「心因性」と呼びました。神経症、つまりノイローゼは、この心因性を代表する存在でした。

外因性・内因性・心因性という3つの分類を示す図解イラスト

フロイトの精神分析が作った、「除外診断」としての神経症

神経症という診断は、少し変わった成り立ちをしています。「精神病でもなく、身体の病気でもなく、内因性でもない」——まず他の病気の可能性を除外したうえで、それでも残るもの、という定義のされ方をしていたのです。その中身を理論的に埋めていったのが、フロイトの精神分析でした。

フロイトは、本人も気づいていない無意識の欲求と、それを抑え込もうとする心の働きとの間の「葛藤」が、不安や身体の症状という形で表に出てくると考えました。この考え方のもとで、不安神経症、強迫神経症、恐怖症、ヒステリー、心気症など、いろんな分類が作られていきました。

なぜ「神経症」は無くなったのか——1980年、ひとつの転換点

「無意識の葛藤」という説明は、理論としては魅力的である一方で、外から客観的に確かめることが難しいという弱点を抱えていました。ある患者さんの不安が、本当に無意識の葛藤によるものなのかどうかを、誰が見ても同じように判定する方法がなかったのです。

1980年に刊行された米国精神医学会の診断基準DSM-第3版(DSM-III)は、目に見えない心理的なメカニズムを推定する分類をやめ、観察できる症状の組み合わせによって診断を定義する「記述的診断」へと大きく舵を切りました。この改訂を境に、それまでひとまとめにされていた「神経症」というカテゴリは、公式な診断名としては使われなくなり、不安症、パニック症、社交不安症といった、より細かな診断名に置き換えられていきました

国際的な診断基準であるICD(国際疾病分類)でも、同様の流れが続きます。2019年に発表されたICD-11では、それまで「神経症性障害」という章立ての中に含まれていた不安症群・強迫症群・ストレス関連症群・解離症群などが、それぞれ独立した診断群として整理し直され、「神経症」という概念そのものが手引きから姿を消しました

それでも残る「心因」という見方——古いけれど、消えていない

公式な診断基準では、「神経症」という言葉はすでに過去のものです。ただ、正直にお話しすると、臨床の現場で患者さんの状態を理解しようとするとき、「これは体質的なものなのか、それとも今の生活のストレスによるものなのか」という、かつての内因・心因という視点そのものは、今も精神科医の頭のどこかで使っています。

もちろん、これは診断基準としては古い考え方で、実際の診断はDSM-5-TRやICD-11の、観察できる症状にもとづいた基準で行います。ただ、患者さんご本人やご家族に病状をご説明する際の「たとえ」としては、今でも案外、伝わりやすい枠組みだったりするのです。

精神科の診察室で医師が患者と穏やかに向き合って話を聞いているイラスト

「ノイローゼかも」と感じたら、まずはその中身を一緒に整理しましょう

つまり、今「ノイローゼ」という言葉が指しているのは、特定の病名ではなく、「心理的な要因によって起こる不調や病気の全般」という、かなり広い範囲のものです。不安症かもしれませんし、適応障害かもしれませんし、あるいは他の背景が隠れていることもあります。

「ノイローゼ気味」という感覚そのものは、決して軽く扱ってよいものではありません。その”もやもや”とした状態が、具体的にどの診断に近いのか、あるいは診断名がつくようなものではなく生活の調整で十分なのかを、丁寧にお話をうかがいながら一緒に整理していくのが重要です。。

参考文献

  • American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Third Edition (DSM-III). Washington, DC: APA; 1980.
  • World Health Organization. ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics(2019年公表)「Anxiety or fear-related disorders」「Disorders specifically associated with stress」等の章立てについて
  • 日本精神神経学会(日本語版用語監修)「DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」医学書院
  • Schneider K. Klinische Psychopathologie(クルト・シュナイダー『臨床精神病理学』)における内因性・外因性・心因性の分類に関する記述

シティライトクリニック 心とからだ|新宿 西武新宿駅徒歩1分

こころのお悩み、まずはご相談ください

不眠・うつ・不安・ADHD・発達障害|当日予約・即日診断書・夜22時まで診療

WEB予約はこちら →
一覧へ戻る