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「先生、認知行動療法ってやってもらえますか?」——精神科医が正直に答えます|新宿 心療内科 シティライトクリニック 心とからだ

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「先生、認知行動療法ってやってもらえますか?」——精神科医が正直に答えます

外来でときどき、こう聞かれることがあります。

「認知行動療法って、やってもらえますか?」

その質問を受けるたびに、私は少し考えてしまいます。「はい、やってます」とも「いいえ」とも、単純には言えないからです。

今日は、その話を正直にしようと思います。

認知行動療法(CBT)とは何か——難しく言わなければ

「認知行動療法」という言葉、ネットで調べると難しそうに書いてあって、かえってわからなくなる方が多いと思います。

簡単に言ってしまえば、「ものの見方のくせ」に気づいて、それを少しずつ修正していく練習です。

たとえば、こういう方がいました。

会社でミスをするたびに「自分はダメな人間だ」と思い込み、そのたびに気分が落ち込む。落ち込むから集中できなくてまたミスをする——という悪循環に陥っていた30代の男性です。

彼の場合、「ミスをした」という出来事と「自分はダメだ」という解釈の間に、大きな飛躍がありました。認知行動療法的に言えば、この「自分はダメだ」という瞬間的な解釈を「自動思考」と呼びます。

この自動思考に気づき、「本当にそうか?」と客観的に問い直すことが、CBTの出発点です。

精神科医は認知行動療法をやってくれるのか——正直なところ

ここが、患者さんが一番知りたいところだと思います。

正直に言います。精神科医の多くは、CBTの専門的なトレーニングを受けていません。

日本では、認知行動療法の専門的なトレーニングは医師免許取得後に別途学ぶ必要があり、習得には相当な時間と訓練が必要です。外来が忙しい精神科医にとって、50分×16回といった標準的なCBTのプロトコルを実施するのは、現実的に難しいことが多いのです。

では、カウンセラーはどうか。

これも難しい問題があります。日本には「公認心理師」「臨床心理士」という資格がありますが、CBTに習熟しているかどうかは資格だけでは判断できません。CBTを専門的に学んでいるカウンセラーとそうでないカウンセラーが混在しており、外からは見えにくい状況です。

ひょっとしたら——と私が感じるのは、「認知行動療法をやっている」と明示していない医師の中にも、日々の診察の中でCBT的なアプローチを自然に行っている人がいるということです。私自身がそうかもしれません。

「自動思考」を特定することが、すべての出発点

私が外来で実践していることをお話しします。

初診でお話を聞くとき、私は必ずこう尋ねます。「気分が一番落ち込んだのは、いつ、どんな場面でしたか?」

「上司に資料を指摘されたとき」「朝、会社に向かう電車の中で」「夜、一人で食事をしているとき」——こうした具体的な状況を聞くことで、どんな場面で、どんな考え(自動思考)が浮かんでいるのかが少しずつ見えてきます。

あるとき、こんな方がいました。

適応障害で受診された20代の女性。「職場に行くと体が震える」と言っていました。話を聞いていくと、職場の会議室に入るたびに「また失敗する」「皆に見られている」という考えが瞬時に浮かんでいることがわかりました。

私は彼女に、「次に体が震えたとき、そのとき頭に浮かんだ言葉をそのままスマホにメモしてください」とお願いしました。

2週間後の診察で、彼女はいくつかのメモを持ってきました。「また変な発言をした気がする」「みんな私のことを嫌だと思っている」——こうした言葉が並んでいました。

「これが、あなたの自動思考です」と私は言いました。「この言葉が本当かどうか、一緒に考えてみましょう」

これがCBTの出発点です。特別な技法でも、難しいプロセスでもありません。時と場所を記録し、浮かんだ言葉を客観的に見つめる——それだけで、多くの方が「あ、自分はいつもこう考えるくせがあるんだ」と気づきます。

気づくと、不思議と修正されていく

おもしろいことに、自動思考に気づくだけで、症状が改善し始めることがあります。

先ほどの女性は、3回目の診察のときに「最近、会議室に入るときの震えが少し減った気がします」と言いました。私は特別なワークをしたわけではありません。ただ、「そのときに浮かんだ言葉をメモしてください」とお願いしただけです。

自分の自動思考を記録するという行為自体が、「自動思考と自分を切り離す」練習になっているのです。CBTでは「脱中心化」と呼ぶプロセスですが、私はそれをあえてCBTとは言わずに、自然な会話の中で行っています。

これが、「CBTと知らずにCBTを行っている」状態です。

では、本格的なCBTが必要なときは?

もちろん、より体系化されたCBTが必要なケースもあります。

強迫性障害(OCD)における曝露反応妨害法パニック障害における認知再構成PTSDに対するトラウマフォーカスCBT——これらは、専門的なトレーニングを受けたセラピストによる、より体系的なアプローチが必要です。

日本うつ病学会のガイドラインでも、うつ病の治療において認知行動療法は薬物療法と同等あるいはそれ以上の効果を持つ心理療法として推奨されています[1]。また、Hofmannら(2012)のメタ分析では、CBTが不安障害・うつ病・PTSD・強迫性障害など幅広い精神疾患に有効であることが示されています[2]

こうした場合、私は患者さんに率直に「専門のカウンセラーへの紹介を考えましょう」とお伝えします。ただ、先に述べたように、習熟したカウンセラーを探すのは難しいのが現状です。

「認知行動療法的な診療、できますか?」と聞いてみていい

最後に、実践的なアドバイスをひとつ。

受診する精神科医に、「認知行動療法的なアプローチはできますか?」と直接聞いてみることを、私はお勧めしています。

この質問に対して医師がどう反応するか、それ自体が大切な情報です。「やっていません」「専門外です」と正直に言える医師は信頼できます。逆に「もちろんです」と即答する医師が、本当に習熟しているかどうかは確認が必要です。

「薬だけでなく、ものの考え方についても一緒に話せますか?」という聞き方でも構いません。こうした対話ができる医師かどうかを、初診のときに見極めることが、治療がうまくいくかどうかに大きく関わってきます。

当院では、初診に30分以上時間をかけ、薬の話だけでなく、どんな場面でどんな考えが浮かぶかという話も丁寧にお伺いしています。「認知行動療法をやってもらいたい」という方も、まずはお気軽にご相談ください。

まとめ——CBTは「特別な治療」ではなく、「考え方の練習」

  • 認知行動療法(CBT)は、「考えのくせ(自動思考)」に気づき、修正していく心理療法です
  • すべての精神科医がCBTに習熟しているわけではありませんが、CBT的なアプローチを自然に行っている医師もいます
  • 自動思考をメモに記録するだけで、症状が改善し始めることがあります
  • 本格的なCBTが必要なケースでは、専門のカウンセラーへの紹介が有効です
  • 「認知行動療法的な診療はできますか?」と医師に直接聞くことは、治療の選択に役立ちます

参考文献

  1. 日本うつ病学会. うつ病治療ガイドライン 第2版. 2016. https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/160731.pdf
  2. Hofmann SG, Asnaani A, Vonk IJ, Sawyer AT, Fang A. The Efficacy of Cognitive Behavioral Therapy: A Review of Meta-analyses. Cogn Ther Res. 2012;36(5):427-440. doi:10.1007/s10608-012-9476-1. IF: 3.0
  3. Butler AC, Chapman JE, Forman EM, Beck AT. The empirical status of cognitive-behavioral therapy: a review of meta-analyses. Clin Psychol Rev. 2006;26(1):17-31. doi:10.1016/j.cpr.2005.07.003. IF: 7.6
  4. 厚生労働省. 認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル. 2010. https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/01.pdf

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