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「私、INFPだから」外来で若者から聞いた言葉と、精神科医が伝えたいこと|新宿 心療内科 シティライトクリニック 心とからだ

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「私、INFPだから」外来で若者から聞いた言葉と、精神科医が伝えたいこと|新宿 心療内科 シティライトクリニック 心とからだ

外来で、こんな会話が増えました。

「先生、私INFPなんです。だから人といると疲れるし、繊細すぎるところがあって……。」

ある日の午後、ハタチ前後の患者さんがそう話してくれました。診察室でMBTIの話が出るようになったのは、いつからでしょうか?1〜2年??もっと前のような気もします。新宿というエリア柄、TikTokやX)をよく見る若い患者さんが多く、「MBTIで自己分析しました」という言葉を、もう珍しいとは思わなくなりました。

最初はびっくりしました。構造的というか、専門的な用語を使い自己分析することが当たり前になっていることに対して、です。何人もの患者さんと話すうちに、ひょっとしたらこれは、精神科医として無視すべきものではなく、うまく付き合えば診療に役立つものかもしれない、と考えるようになりました。今日は、そんな臨床の現場での気づきをお話ししたいと思います。

なぜ今、こんなにMBTIが流行っているのでしょうか

まず知っておいていただきたいのは、いま若い世代の間で流行しているのは、正確には「MBTI」そのものではないケースが多い、ということです。多くの方がスマートフォンで受けているのは、16Personalitiesという海外の無料診断サイトで、これは正式なMBTIとは開発の経緯も理論的背景も異なります。実際、日本MBTI協会は公式に「16Personalitiesの結果をMBTIだと思って受け取らないでほしい」と注意喚起しています。

それでも、この診断がここまで広がった理由は理解できる気がします。ある調査では、Z世代女性の41.3%がMBTI系の診断を実施したことがあり、67.3%が認知していると報告されています。これは30〜40代女性の実施率の2倍以上です。私自身、こうした診断が悪いものだとは思っていません。むしろ、「自分について話す言葉」を持つことは、精神科の診療においてとても大切なことだからです。

「性格」と「病気」は、どう違うのでしょうか

ここで少し、精神科医としての視点を挟ませてください。私たちが診療で扱う「診断」と、MBTIのような性格診断は、そもそも目的が違います。

精神科の診断基準(DSM-5-TRやICD-11)は、生活に支障が出るほどの症状のパターンを見極めるための道具です。一方、MBTIや16Personalitiesは、健康な人の「個性の違い」を記述するための、いわば心理学的な読み物に近いものです。つまり、どちらが正しい・間違っているという話ではなく、そもそも土俵が違うのです。

実は学術的な性格心理学の世界では、MBTIよりも「ビッグファイブ」という理論の方が、今も研究の中心にあります。これは性格を5つの連続的な尺度(開放性・誠実性・外向性・協調性・神経症傾向)で捉えるもので、白か黒かではなく、グラデーションで人を見ようとする考え方です。McCrae & Costa(1989年, Journal of Personality)の研究では、MBTIの4つの指標とビッグファイブの間には対応関係が見られる一方、MBTIが主張するような「はっきり分かれたタイプ」を裏付ける証拠はないと結論づけられています。つまり、内向的か外向的かは、本来「どちらか」ではなく「どのくらい」の問題だということです。

これは知っておいていただきたいのですが、決してMBTIを否定したいわけではありません。むしろ、「私は内向型だから、無理に社交的にならなくていい」という気づきは、多くの患者さんにとって本当に救いになっています。ただ、タイプというラベルを、あまりに固定的に、100%正しいものとして受け取りすぎると、しんどくなる場面もある、ということです。

MBTIが「診察室の入り口」になってくれること

ここからは、精神科医として肯定的に感じている面についてお話しします。

先ほどの患者さんとの会話に戻ります。彼女は「INFPだから」と自分の性質を語ってくれましたが、そこから話を広げていくと、実は数ヶ月前から眠れない日が続いていて、仕事にも行きづらくなっていることが分かりました。彼女にとって「INFP」という言葉は、自分の状態を誰かに説明するための、最初の取っ掛かりだったのだと思います。

精神科の敷居は、まだまだ高いと感じている方が多いのが現実です。「気分が落ち込む」「人と会うのが疲れる」という感覚を、いきなり「うつかもしれません」と言葉にするのは、勇気がいることです。それに比べて「私、INFPなので」という言い方は、ずっと軽く、話しやすい入り口になります。SNS上でのこうした性格診断の共有には、自己開示や共感を求める心理が背景にあるとする研究も報告されています。私はこれを、悪いことだとは思いません。むしろ、その先にある本当の困りごとに、私たちがどうやってたどり着けるかが大切なのだと感じています。

実際、診察の場で「あなたはINFPなんですね、そのタイプの方によくある感覚として……」と、その方の使っている言葉から会話を始めると、驚くほどスムーズに本音を話してくださることがあります。カウンセリングの世界でも、患者さんが使っている言葉を尊重しながら対話を進めることは、基本的な姿勢の一つです。MBTIは、その意味で「共通言語」としての価値を持っていると、私は考えています。

ただし、気をつけていただきたいこともあります

ここまで肯定的な話をしてきましたが、精神科医として、いくつかお伝えしておきたい注意点もあります。

一つは、タイプに「自分を閉じ込めすぎない」ということです。私の知人の大学教授(某心理学科)は、いま流行しているのは正式なMBTIではなく「MBTIもどき」で安易な過信は就職や恋愛、結婚といった人生の選択肢を狭める「機会損失」につながりかねないよ?と言っていました。。「私はこのタイプだから、この仕事は向いていない」「このタイプ同士だから相性が悪い」と決めつけてしまうのは、少しもったいないと感じます。

もう一つ、臨床の現場でより気になっているのは、SNSでの性格診断や症状紹介を見て、「自分は発達障害かもしれない」「ADHDかもしれない」と、ご自身で診断名をつけてしまうケースです。TikTok上の自閉症関連の人気動画を分析した研究(Aragon-Guevara et al., 2025, Journal of Autism and Developmental Disorders)では、上位動画のうち正確な内容は27%にとどまり、41%は不正確、32%は過度な一般化だったと報告されています。SNSの情報は、きっかけとしては悪くありませんが、それだけで自分を決めつけてしまうのは、慎重になっていただきたいところです。

当院での、ある症例から

少し前に診察したケースをご紹介します(プライバシー保護のため、複数の事例を組み合わせ、詳細を変更しています)。

20代後半の女性が、「MBTIでINFJと出たのですが、最近その診断結果通りの生きづらさを強く感じていて」と受診されました。話を伺うと、職場での人間関係のストレスから、数週間にわたって不眠と食欲低下が続いており、涙もろさも出ていました。ご本人は「これはINFJだからこう感じるんだ」と、性格のせいだと捉えていらっしゃいましたが、詳しくお話を伺うと、適応障害の診断基準に近い状態だと考えられました。

この方には、まず「性格の傾向と、いま起きている体調の変化は、分けて考えていいですよ」とお伝えしました。INFJらしい繊細さや共感性の高さは、その方の個性として大切にしながら、一方で今の不眠や気分の落ち込みについては、治療の対象として一緒に取り組みましょう、という提案です。数週間の治療で、睡眠も気分も落ち着き、「性格のせいだと思って諦めていたけれど、そうじゃない部分もあったんですね」と話してくださったのが、印象に残っています。

「もしかして」と思ったときに、知っておいてほしいこと

MBTIや16Personalitiesは、自分を知るための、気軽な入り口として、これからも使っていただいて構わないと思います。ただ、もし次のようなサインがあれば、それは「性格」だけの問題ではないかもしれません。

  • 診断結果に自分を当てはめて、「このタイプだから治らない」「価値がない」と感じてしまう
  • 不眠や強い不安、涙もろさなど、体調の変化が2週間以上続いている
  • 診断結果を理由に、進路や人間関係、仕事の選択肢を大きく狭めてしまっている

こうしたときは、性格診断だけで判断せず、一度専門家に話を聞いてもらうことをお勧めします。当院では、MBTIのようなポップ??な自己理解のツールも否定せず、そこから見えてくる「本当の困りごと」に、丁寧に耳を傾けることを大切にしています。新宿という土地柄、夜のお仕事の方から会社員、学生まで、幅広い方が来院されますが、どんな入り口からでも、安心してご相談いただければと思います。

「私、〇〇タイプなので」という言葉は、あなたが自分を理解しようとしてきた、大切な一歩です。その一歩の先に、もう少し楽になれる道があるかもしれません。気になることがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。


参考文献

  1. McCrae RR, Costa PT Jr. Reinterpreting the Myers-Briggs Type Indicator from the perspective of the five-factor model of personality. Journal of Personality. 1989;57(1):17-40.
  2. Pittenger DJ. Cautionary comments regarding the Myers-Briggs Type Indicator. Consulting Psychology Journal: Practice and Research. 2005;57(3):210-221.
  3. Aragon-Guevara D, et al. The Reach and Accuracy of Information on Autism on TikTok. Journal of Autism and Developmental Disorders. 2025.
  4. Forer BR. The fallacy of personal validation: a classroom demonstration of gullibility. Journal of Abnormal and Social Psychology. 1949;44(1):118-123.
  5. American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision (DSM-5-TR). 2022.
  6. World Health Organization. ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics. 2019/2021.
  7. 一般社団法人日本MBTI協会. 「16Personalities性格診断テストをMBTIだと思って受けられた方へ」公式見解. https://www.mbti.or.jp/discussion/06
  8. 小塩真司. 『性格診断ブームを問う—心理学からの警鐘』岩波ブックレット. 2025.
  9. 株式会社MERY. MERY Z世代研究所「診断コンテンツに関する調査」. 2024年10月17日発表.

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