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淋菌・クラミジア陰性でも症状が続く?マイコプラズマ・ジェニタリウムの検査と治療

淋菌・クラミジアは陰性。でも症状が続く…医師が考えるマイコプラズマ・ジェニタリウム

外来で、ときどき同じような流れに出会います。

「のどと性器の淋菌・クラミジアは検査して陰性でした。
でも、おりものが変で…においも気になるし、違和感も続きます。何の病気なんでしょうか?」

検査結果が陰性だと、いったん安心したくなる。これは自然です。
でも、症状が残ると、不安ですし、なにより実際に病気の可能性があるのでほっとけません。

結論としては、淋菌・クラミジアが陰性でも「原因が残っている」ケースはあります。
そのとき私が鑑別に入れるものの一つが、マイコプラズマ・ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium:Mgen)です。


目次(淋菌クラミジア陰性でも症状が続くときの考え方)


「陰性」は何を意味する?(検査で分かること・分からないこと)

まず最初に、ここを丁寧に整理します。

のど・性器の淋菌/クラミジアが陰性というのは、「その時点の、その部位の検体で、淋菌・クラミジアが検出されなかった」という意味です。
これは重要な情報で、安心材料にもなります。

一方で、おりもの異常や違和感の原因は、淋菌・クラミジア“以外”にも多くあります。
つまり、陰性=「もう原因はゼロ」とは限りません。
ここが、患者さんが一番モヤモヤしやすいポイントです。


まず淋菌・クラミジア(のど/性器)を検査する理由(当院の基本)

当院では、症状がある方に対して、まず淋菌・クラミジア(のど/性器)をきちんと確認する方針です。

理由はシンプルで、頻度が高く、放置すると困ることがあり、治療の道筋も立てやすいからです。
ここを飛ばして「珍しい原因」から追うのは、現場では遠回りになることが多い。

だからこそ、まずはメジャーを押さえる。
そして「陰性だったのに症状が残る」ときに、次の一手を冷静に組み立てます。


陰性でも症状が続くときに医師が見るポイント(おりもの・頸管炎・尿道炎)

「おりものが変」「違和感がある」という訴えの背景には、いくつかの“場所”が候補になります。

  • 腟のトラブル:細菌性膣症(BV)、カンジダ、トリコモナス など
  • 頸管(子宮の入口)の炎症:頸管炎(原因は複数)
  • 尿道の炎症:排尿時の痛み・違和感が主になることも

診察では、「腟炎っぽいのか」「頸管炎っぽいのか」「尿道炎っぽいのか」をまず分けます。
この切り分けができると、検査も治療も、余計な回り道が減ります。


非淋菌性尿道炎(NGU)・頸管炎の鑑別にマイコプラズマ・ジェニタリウムが上がる理由

ここからが本題です。

淋菌・クラミジアが陰性でも、症状が「頸管炎(子宮の入口の炎症)」や「非淋菌性尿道炎(NGU)」の雰囲気を持っていることがあります。
たとえば、おりものの増加、違和感、不正出血、下腹部の重さ、排尿時の違和感などです。

このとき鑑別として上がってくるのが、マイコプラズマ・ジェニタリウムです。
ポイントは、症状がクラミジア/淋菌と“似て見える”ことがあるという点です。
だから、まずGC/CTを検査して陰性だったあとに、次の候補として浮上します。

ガイドラインでも、MgenはNGUの原因として重要で、症状が持続・再発する場合に検査や治療を検討するという整理がされています。1,2


マイコプラズマ・ジェニタリウムが見落とされやすい理由(知名度・検査が一般的でない)

淋菌・クラミジアは、一般の方にもだいぶ浸透してきました。
一方、マイコプラズマ・ジェニタリウムは、まだ「聞いたことがない」という方も多い。

そして現実的にもう一つ。
検査がどこでも標準セットで行われるわけではない、という問題があります。

結果として、患者さんの体感はこうなりがちです。
「検査は受けた(陰性だった)。でも症状はある。じゃあ私は何なんだろう」

この“空白”を埋める鑑別の一つとして、マイコプラズマ・ジェニタリウムを意識する価値があります。


マイコプラズマ・ジェニタリウムを疑う目安(淋菌クラミジア陰性+症状が続く/繰り返す)

もちろん、全員にマイコプラズマ・ジェニタリウム検査を広げれば良い、という話ではありません。
私が臨床で「可能性が上がってきた」と感じるのは、たとえば次のような場面です。

  • 淋菌・クラミジア(のど/性器)が陰性なのに、症状が続く
  • 頸管炎っぽい症状(おりもの、不正出血、性交時の痛み・違和感)が繰り返す
  • 尿道炎っぽい症状(排尿時の痛み、違和感)がすっきりしない
  • いくつかの治療をしても、はっきり改善しない(また戻る)

このあたりまで来ると、検査の棚を一段増やして、マイコプラズマ・ジェニタリウムを確認する(あるいはマイコプラズマ・ジェニタリウムを想定した治療を検討する)価値が出てきます。


マイコプラズマ・ジェニタリウム治療は耐性が前提|ビブラマイシン/アジスロマイシン/シタフロキサシンの位置づけ

Mgenを語るとき、治療の話は避けて通れません。
理由は一つで、耐性菌の問題がはっきり存在するからです。1,2

ここで私が患者さんにお伝えするのは、いつも同じです。
「マイコプラズマ・ジェニタリウムは、当てずっぽうで抗菌薬を繰り返すと、かえって長引くことがある」ということ。
だから、治療は“順番”が大切になります。


ビブラマイシン(ドキシサイクリン):最初に「菌量を落とす」役

ドキシサイクリン(ビブラマイシン)は、マイコプラズマ・ジェニタリウムに対して「これで一発で終わらせる」というより、次の治療につなげるために菌量を落とす目的で位置づけられることがあります。1,2

ガイドラインでも、まずドキシサイクリンを使い、その後に状況(耐性など)に合わせて次の薬を選ぶ、という“段階的な考え方”が提示されています。1,2


アジスロマイシン:効く株には効く。ただ「効かない」が増えている(マクロライド耐性)

アジスロマイシンは、マイコプラズマ・ジェニタリウム治療で古くから使われてきた薬の一つです。
しかし現在は、マクロライド耐性(アジスロマイシンが効きにくい)が問題になります。1,2

そのため、ガイドラインでは、可能なら耐性を踏まえた治療選択(耐性が疑われるなら別の選択肢へ)を推奨しています。1,2
少なくとも、「効かなかったのに同じ薬を何度も」という形は避けるべきです。


シタフロキサシン:日本でよく使われる選択肢。ただしキノロン耐性が絡むと難しくなる

マクロライド耐性が疑われる/確認される場面では、フルオロキノロン系が治療選択に入ります。
海外ではモキシフロキサシンがよく扱われますが、日本の臨床ではシタフロキサシンが選択肢になることがあります。2,3

ただし、近年は、キノロン耐性関連変異(例:parC など)が増えると、治療が難しくなる可能性が示されています。2,3
このため当院では、治療歴や症状の経過も含めて、できるだけ“無駄撃ち”をしないように組み立てます。


※ここで挙げた薬剤名は一般的な位置づけの説明です。実際の治療は、症状・診察所見・治療歴・耐性の状況・体質(副作用リスク)で変わります。


当院での進め方|まず淋菌・クラミジア、その次にMgenを検討する流れ

当院では基本的に、次の順番で考えます。

  • まず淋菌・クラミジア(のど/性器)を確認する(メジャーを外さない)
  • 陰性でも症状が残る場合、腟炎(BV/カンジダ/トリコモナス)頸管炎の評価を組み合わせる
  • それでも説明がつきにくい・繰り返す場合に、Mgenを鑑別として上げ、検査や治療を検討する

「陰性なのに、まだ不安が続く」状態は、体だけでなく気持ちも消耗します。
原因の候補が整理できて、道筋が見えるだけで、少し楽になる方も多いです。

当院(新宿・歌舞伎町)の診療案内はこちら


今日、受診した方がいいサイン(発熱・下腹部痛・不正出血など)

次の症状がある場合は、早めに医療機関で評価した方が安全です。

  • 発熱がある
  • 下腹部痛が強い/悪化している
  • 吐き気がある
  • 不正出血が続く
  • 強い痛み・ただれ・水疱がある

よくある質問(FAQ)

Q. 淋菌・クラミジアが陰性なら、もう性感染症は否定できますか?
淋菌・クラミジアについては可能性が下がります。ただ、原因は他にもあり、症状と所見に合わせて追加の検査を検討します。
Q. マイコプラズマ・ジェニタリウムは、誰でも検査した方がいいですか?
一律ではありません。淋菌/クラミジア陰性でも症状が続く、繰り返す、頸管炎・非淋菌性尿道炎の雰囲気がある、などの場合に鑑別として上がってきます。
Q. 抗菌薬を先に飲めば早く治りますか?
Mgenは耐性の問題があるため、自己判断で抗菌薬を繰り返すと長引くことがあります。検査と治療をセットで、医師と相談するのが安全です。

参考文献

  1. CDC. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines (2021): Mycoplasma genitalium
  2. Jensen JS, et al. 2021 European guideline on the management of Mycoplasma genitalium infections (JEADV, 2022)
  3. (日本)男性尿道炎(非淋菌性尿道炎を含む)に関する国内ガイドライン・解説(Mgen/耐性の整理)
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