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私って本当にアスペなの?ASDの正しい診断|新宿 心療内科 シティライトクリニック 心とからだ

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「空気が読めない人」のことを「アスペ」と呼ぶ使い方が、随分と定着してきました。SNSでは「あの人アスペっぽい」という表現がさらっと流れ、職場でも冗談まじりに使われている。そういう光景を見るたびに、精神科医としてひとつ気になることがあります。

当院の問診票には「ずっとアスペルガーかもと思っていました」という記述がよく登場します。書いてくださる方の多くは、長い時間をかけて自分なりに考え、たどり着いた言葉として書いてくれている。その重さはちゃんと受け取りたいと思っています。ただ、「アスペ」という俗語と、医学的な ASD(自閉スペクトラム症)の診断の間には、実はかなり大きな溝があります。

問診票を手にする精神科医のイラスト

「アスペルガー症候群」という診断名は、今はもう使われていない

「アスペ」の語源は「アスペルガー症候群(Asperger’s Disorder)」です。かつて(DSM-IV時代)は、自閉症・アスペルガー症候群・広汎性発達障害(PDD-NOS)など複数の診断名が使い分けられていました。

それが2013年のDSM-5改訂で大きく整理され、これらはすべて「自閉スペクトラム症(ASD)」という一つの診断名にまとめられました。2022年発刊のDSM-5-TRでも同様です。つまり、現在の精神科外来では「アスペルガー症候群です」という診断はしません。診断名として使うのは「ASD」です。

俗語としての「アスペ」はその後も生き続け、むしろSNSを通じて独り歩きし、「変わった人」「空気が読めない人」全般を指す言葉になりました。医学的な定義から遠ざかるほど広く使われるようになったわけです。

ASDの診断基準——「幼少期から」というのが大前提

DSM-5においてASD(自閉スペクトラム症)の診断に必要な主な条件を整理すると、次のとおりです。

  • 社会的コミュニケーションの持続的な困難:対人関係の築き方、言葉のやりとり、表情や身振りの理解など
  • 限定的・反復的な行動や興味のパターン:決まった手順へのこだわり、特定の対象への強い執着、感覚の過敏さや鈍さ(2種類以上)
  • これらの症状が発達早期(幼少期)から存在していること

3番目が、今回の話の核心です。

ASDは「大人になってから発症する」ものではなく、生まれつきの脳の特性です。そのため、「子どものころからそういう特性がある」ことが診断の前提条件になっています。成人になってからはじめて困り感が表面化することはあっても、さかのぼってみれば「幼少期にも特性はあった」というのがASDの典型的な経過です。

外来でよく経験するのは、「大人になって初めて自分がASDと気づいた」という方が詳しく話を聞かせてくれると、「そういえば子どものころ、友だちとうまく遊べなかった」「先生の言葉を字義どおりに受け取りすぎて、ずれていた」といったエピソードが出てくるケースです。当時は「ちょっと変わった子」で片付けられていたけれど、振り返ると特性のエピソードがある——そういう方は少なくありません。

「子どものころは普通だった」という場合——鑑別が重要になる

問題は、丁寧に聞いても幼少期に目立った話が出てこない場合です。

「学校でも友だちがいたし、集団生活も普通にやっていた。でも大人になってから職場で浮いたり、人間関係が続かなくて困っている」——こういう訴えは、ASDとは別の方向から考える必要があります。精神科医が次に検討するのは、主に二つの方向性です。

①知的発達症(知的障害)の可能性

知的発達症は、知的機能(推論・問題解決・学習など)と日常生活の適応機能に制約があり、それが発達期(おおよそ18歳まで)に生じているものです。DSM-5では、標準化された知能検査でおよそIQ70以下が目安の一つとされますが、IQ単体で診断が決まるわけではなく、実際の生活でどう困っているかという「適応機能」の評価も重要です。

知的発達症のある方が「空気が読めない」「コミュニケーションがうまくいかない」と感じることはあります。ただし、そのメカニズムはASDとは異なります。

②パーソナリティ障害の可能性

幼少期のエピソードが確認できず、知的機能にも特に問題がない場合、次に考えるのがパーソナリティ障害です。パーソナリティ障害は、思春期以降に固定してきた「人格のパターン」によって対人関係や社会生活に持続的な困難が生じる状態で、ASDのような「生まれつきの神経発達の問題」とは出自が異なります。

対人関係の難しさが目立つタイプとしては、回避性・スキゾイド性・自己愛性などのパーソナリティ障害があります。なかでもスキゾタイパル(統合失調型)パーソナリティ障害は、ASDと症状が重なることがあり、見分けが難しいケースもあります。

ASD・知的発達症・パーソナリティ障害の鑑別フロー図

鑑別には心理検査が必要

ASD・知的発達症・パーソナリティ障害の区別は、問診だけでは難しいことがほとんどです。より客観的なデータを得るために心理検査を組み合わせます。

  • WAIS(ウェクスラー成人知能検査):知的機能を数値で評価し、領域ごとの得意・不得意のばらつきも把握できる
  • AQ(自閉症スペクトラム指数):ASD的な特性の傾向をスクリーニングする質問紙

これらの結果を問診の内容と照らし合わせ、医師が総合的に判断します。「検査を受けたから診断が出る」というものでもなく、検査はあくまで判断の材料の一つです。

受診前に自分で確認しておけること

専門機関を受診する前に、自分でできる確認がいくつかあります。

  • 子どものころの通知表や学校でのエピソードを思い出す——「集団行動が苦手と書かれていた」「特定の科目だけ突出してよかった・悪かった」など。当時の通知表や連絡帳が残っていれば、持参すると診察の参考になります
  • 親や兄弟に幼少期の様子を聞いてみる——自分では覚えていなくても、「赤ちゃんのころから育てにくかった」「幼稚園の先生に何か言われた」という情報が鑑別の重要なヒントになります
  • 今困っている場面を具体的に書き出す——「どんな場面で」「何が起きて」「どう困っているか」をメモしておくと、初診の問診がずっとスムーズになります

「今の困り感」を解消することが本来の目的

「自分はASDかどうか」という問いは大事です。でも、診断名を確定することがゴールではありません。

「アスペかも」という言葉の背景には、たいてい「なぜ人間関係がこんなに難しいんだろう」「どうして自分だけ生きにくいんだろう」という長年の問いが隠れています。その問いに応えるために、診断は一つの手がかりにすぎません。大切なのは、今の困り感に対してどう対処するかを一緒に考えることだと思っています。

当院では、問診と心理検査を組み合わせた鑑別診断を行っています。「ASDかどうか確かめたい」という方はもちろん、「自分の状態をまず整理したい」という方もぜひご相談ください。

医師と患者が穏やかに話し合うイラスト

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