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性器だけじゃない?右脇腹の痛みや目の充血も…「なんとなく不調」の裏に隠れたクラミジアの多彩なサイン

性器だけじゃない?右脇腹の痛みや目の充血も…クラミジアが引き起こす意外な症状

ある日の診察室。いつも通り診察室で症状を伺うと、「おりものと…」(ふむふむ)「おなかがいたいです」(!!!)

この瞬間自分の中のスイッチが入ります 。「ひょっとして!!」と…

今日は、皆さんがイメージする「性器の病気」という枠を飛び越えて、身体中に様々な悪さをするクラミジアの少し怖い、でも知っておくべき真実についてお話ししようと思います。

「おりものが変」だけじゃない?お腹の奥が痛む本当の理由

「クラミジア=おりものが増える」というイメージをお持ちの方は多いと思います。もちろん、それは正解です。しかし、現場に立っていると、それよりももっと深刻な「お腹の痛み」を訴える方が後を絶ちません。

医学的に説明しましょう。まず、クラミジアが子宮の入り口(頸管)に感染します。これを「子宮頸管炎」と呼びます。ここで止まっていれば、おりものの異常程度で済むこともあります。

しかし、治療せずに放置すると、菌は子宮の内部へと侵入し、さらにその奥にある卵管、そしてお腹の中(腹腔内)へと広がっていきます。これを骨盤内炎症性疾患(PID: Pelvic Inflammatory Disease)と呼びます。

PIDは、いわば「お腹の中の火事」です。卵管炎や卵巣炎を起こすと、下腹部に鈍い痛みや、性行為の際に奥を突かれるような痛み(性交痛)が生じます。日常的に「生理痛が重くなった気がする」と感じて来院され、検査をしたらPIDだった、というケースは本当によくあります。

米国CDC(疾病予防管理センター)のガイドラインにおいても、未治療のクラミジア感染症の約10〜15%がPIDに進行すると報告されており、これが将来的な不妊症の主要な原因となると警告されています[1]。

「ただのお腹の痛み」と思って鎮痛剤で誤魔化している間に、お腹の中で静かに炎症が広がっている。医師としてこれほど歯痒いことはありません。

「右脇腹が痛い」…それは肝臓の周りに及んだ炎症かもしれません

冒頭の患者さんの話に戻りましょう。彼女が訴えていた「お腹の痛み」。これは、フィッツ・ヒュー・カーティス症候群(Fitz-Hugh-Curtis syndrome)と呼ばれる病態である可能性があります。

この痛みは、深呼吸をしたり、体を捻ったりすると鋭く走ることがあります。整形外科や内科をドクターショッピングした挙句、当院のような性感染症クリニックでようやく原因が判明するというケースも、残念ながら珍しくありません。

目やのど、お尻…性器以外にも潜むリスク

性感染症というと、どうしても「パンツの中」だけの問題だと思われがちです。しかし、性行為の形が多様化している現代、感染部位もまた多様化しています。

1. 目の充血・目やに(クラミジア結膜炎)

「片目だけ結膜炎が治らなくて…」という相談を受けることがあります。クラミジアに感染した体液が手につき、その手で目を擦ることで感染することがあります。これを自家感染と言います。通常の目薬では治りが悪く、長引くのが特徴です。

2. のどの違和感(咽頭クラミジア)

オーラルセックスが一般的である以上、喉への感染は非常にポピュラーです。多くは無症状ですが、時に頑固な喉の痛みや腫れを引き起こします。「風邪が1ヶ月も治らない」という場合、耳鼻科ではなく性病検査が必要なことがあります。

3. お尻の不快感(直腸クラミジア)

アナルセックスをする方だけではありません。女性の場合、膣から溢れ出た菌を含んだおりものが伝って、肛門から直腸へ感染することもあります。直腸感染は無症状のことも多いですが、直腸炎を起こすと分泌物や出血、しぶり腹(便意があるのに出ない感覚)などを引き起こすことがあります[2]。

将来の「産みたい」を守るために、今できること

少し厳しいお話をさせてください。クラミジアによる炎症、特に卵管炎は、治ったとしても「傷跡」を残します。卵管が詰まったり狭くなったりすることで、精子と卵子が出会えなくなる(不妊症)、あるいは受精卵が子宮にたどり着けずに途中で着床してしまう(子宮外妊娠)のリスクが跳ね上がります。

日本産科婦人科学会のガイドラインでも、クラミジア感染の既往は卵管性不妊の重大なリスク因子であると明記されており、早期発見と治療の重要性が強調されています[3]。

未来の選択肢を守るために、今のご自分の体と症状を気にかけてほしいのです。

当院が「即日検査・即日治療」にこだわる理由

ここまで読んで、「もしかして…」と不安になった方もいるかもしれません。

当院では、性器だけでなく、喉や直腸などの検査も同時に行うことを推奨しています。なぜなら、一箇所感染していれば、他の場所にも感染している可能性が高いからです。また、淋菌との重複感染もよく見られます。

自由診療である当院の強みは、保険診療の枠にとらわれない「包括的な治療」ができることです。

例えば、検査結果を待たずに、症状や問診から可能性が高いと判断した場合、その場で治療を開始する(こともあります。もちろん、確定診断のための検査は行いますが、結果が出るまでの数日間、菌を放置して炎症を進ませたり、パートナーに感染するリスクを最小限にしたいのです。

「この痛み、性病かも?」と思ったら、迷わず相談してください。あなたのその予感は、医師の診察と同じくらい、重要な診断の手がかりなのですから。


参考文献

  • [1] Workowski KA, Bachmann LH, Chan PA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep 2021;70(No. RR-4):1–187.
  • [2] Dukers-Muijrers NHTM, et al. Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae in the rectum of patients with pelvic inflammatory disease. Sex Transm Infect. 2021.
  • [3] 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編. 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020.

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