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「のどが痛い・イガイガする…それ、クラミジアかもしれません。性病以外も含めた”のどの違和感”の正体を整理します」

つい先日、「のどがイガイガするんですけど、これって風邪ですかね?」と軽い感じで聞いてきた方がいました。問診を進めると、最近オーラルセックスの機会が複数回あったとのこと。「あ、これはちゃんと調べないといけないな」と思いました。のどの違和感というのは、実はかなり情報量が少なくて、何でも起こりうる症状なんです。風邪かもしれないし、性感染症かもしれない。私が歌舞伎町でクリニックをやっていると、このパターンは珍しくありません。

今回は「のどの違和感」について、何を疑うべきか、どう鑑別していくか、をできるだけ整理してお伝えしたいと思います。


のどの違和感=風邪、とは限らない理由

「のど」というのは医学的には咽頭(いんとう)・喉頭(こうとう)・扁桃(へんとう)あたりをまとめて指すことが多いです。口の奥から、声を出す声帯のあたりまでのゾーンですね。

ここに炎症が起きる原因は、大きく分けると、

  • ウイルス感染(風邪の原因の大半はこれ)
  • 細菌感染(溶連菌、黄色ブドウ球菌など)
  • 性感染症(クラミジア、淋菌、梅毒、ヘルペスなど)
  • アレルギーや逆流性食道炎など非感染性のもの

…となります。性行為の経験がある方の場合、このうち「性感染症」の可能性を最初から排除しないことが、診断の上では重要です。症状だけでは、正直区別がつかないことがほとんどです。


咽頭クラミジアは「無症状」がデフォルト──だからこそ厄介

クラミジア(Chlamydia trachomatis)の咽頭感染は、実は症状がないことの方が多いです。

文献では、咽頭クラミジア感染者のうち症状があるのは少数で、多くは無症候性とされています [1]。「のどが痛いからクラミジア」ではなく、「のどに症状がないのにクラミジアだった」というパターンの方がずっと多く、これは診療していて実感していることです。

とはいえ、「違和感がある」「なんとなく痛い」という方でも、検査してみるとクラミジア陽性、ということはあります。先ほどの患者さんも、結果的には咽頭クラミジアが陽性でした。本人は「え、風邪じゃないんですか」とちょっと驚いていましたが、私としては「あり得る」と最初から思っていましたので、特に驚きませんでした。

咽頭クラミジアの特徴をまとめると、

  • オーラルセックスで感染(受け側・与え側ともにリスクあり)
  • 症状:ほとんどない。あっても軽い咽頭痛・違和感程度
  • 診断:咽頭ぬぐい液のNAAT(核酸増幅検査)が最も信頼性が高い [2]
  • 治療:アジスロマイシンまたはドキシサイクリンが基本

淋菌性咽頭炎──こちらは症状が出やすい

淋菌(Neisseria gonorrhoeae)による咽頭感染は、クラミジアと比べると症状が出やすいです。のどの痛み、腫れ、発熱が出ることがあります。ただし、これも無症候性感染が相当数あるとされています [3]

臨床的に困るのが、淋菌はここ数年で薬剤耐性が進んでいる点です。WHO(世界保健機関)は淋菌の多剤耐性を”global health threat”として位置づけており [4]、治療薬の選択が年々難しくなっています。現在の標準治療はセフトリアキソン単回筋注が中心ですが、咽頭感染は性器感染よりも治療効果が出にくい部位とされているため、しっかり確認が必要です。

のどが腫れていて、性行為の心当たりがある場合は、クラミジアと淋菌を同時に調べるのが合理的です。当院では、症状の有無に関わらず、問診上リスクがある方には咽頭の二種類の検査をセットで案内しています。


梅毒ののど症状──見落とされがちな「第二期」

梅毒は近年日本で急増しており、2023年は過去最多水準の報告数となりました [5]。梅毒の中でも、見落とされやすいのが第二期梅毒ののど症状です。

梅毒第二期(感染後数週間〜数カ月)では、のどに「梅毒性扁桃炎」や「粘膜疹」と呼ばれる病変が現れることがあります。これが扁桃炎や口内炎と見た目が非常に似ているため、耳鼻科や内科で「扁桃炎」として治療されても治らない、というケースが来院することがあります。

ひょっとしたら、「のどの風邪が治らない」という主訴で来られた方の一部には、こういうケースが混じっているんじゃないかと私は思っています。梅毒は血液検査(RPR・TPLA)で診断できますので、リスクがある方は確認をお勧めしています。


ヘルペス(HSV)ののど感染

単純ヘルペスウイルス(HSV)も、オーラルセックスによって咽頭に感染することがあります。初感染時は高熱・強いのどの痛み・潰瘍が出ることがあり、かなり辛いです。HSV-1による口腔・咽頭感染とHSV-2の性器感染は、オーラルセックスを介して相互に移行することが知られています [6]

ヘルペスのつらいところは、初感染後に神経節に潜伏して繰り返すことがある点です。咽頭ヘルペスの再発は比較的まれですが、ゼロではありません。


性病じゃない可能性も、もちろんある

冷静に言ってしまうと、のどの違和感の原因として一番多いのは、やはり普通のウイルス性上気道炎(いわゆる風邪)や、溶連菌性咽頭炎です。

溶連菌(A群β溶血性レンサ球菌)は、のどの痛み・発熱・白い滲出物(扁桃についた白いもの)が出やすく、抗生物質が効きます。溶連菌の検査は迅速キットで数分でわかります。

また、逆流性食道炎(胃酸が食道・のどに逆流する状態)も、のどの違和感・イガイガ感の原因になります。飲酒が多い方は特に起こりやすいです。夜間に症状が強い場合や、げっぷが多い場合はこれを疑うことがあります。

判断の目安としては、

疑う疾患 特徴的な状況・症状 確認方法
咽頭クラミジア 症状なし〜軽度、オーラルセックス歴あり 咽頭NAAT検査
咽頭淋菌 のどの痛み・腫れ、オーラルセックス歴あり 咽頭NAAT検査
梅毒(第二期) 扁桃の白斑・口内炎様病変、皮疹 血液検査(RPR/TPLA)
咽頭ヘルペス 強い痛み・潰瘍・発熱、初感染 PCR・培養
溶連菌性咽頭炎 高熱・白い滲出物・扁桃腫脹 迅速抗原検査
ウイルス性上気道炎 鼻水・咳・全身倦怠感も伴う 臨床診断(多くは自然軽快)
逆流性食道炎 イガイガ、げっぷ、夜間増悪 問診・内視鏡

性感染症のリスクがある方にとって怖いのは、「どうせ風邪だろう」と思っていたのに実は性病だった、というパターンです。そしてそのままパートナーに移してしまう。クラミジアや淋菌は症状がないことが多いので、自分では判断がつかないんです。


当院での診療の流れ──検査して、安心か治療かを決める

新宿・歌舞伎町という土地柄、当院にいらっしゃる方の多くは、「症状はないけれど不安」「のどが少し変な感じがする」という方です。検査をしてみると、無症候性の咽頭クラミジアや淋菌が見つかることは珍しくありません。

咽頭の性感染症スクリーニングとして、当院では基本的にクラミジア・淋菌をセットで調べることを案内しています。これは、米国CDCおよびEFCMID(欧州臨床微生物感染症学会)のガイドラインでも、性的活動が活発な集団においてクラミジア・淋菌の同時スクリーニングを推奨していることに準じています [2][3]。梅毒のリスクがある場合は血液検査も追加します。

「検査して陰性だったら安心」「陽性なら治療する」という、シンプルな流れです。治療はほとんどの場合、内服または注射で完了します。

夜間や仕事終わりにいらっしゃる方が多いですので、できるだけ待ち時間なく対応できるように努めています。のどの違和感が続いている方、最近オーラルセックスの機会があった方は、一度受診してみることをお勧めします。症状がないからといって、「大丈夫」とは言い切れないのが、咽頭の性感染症の難しいところです。


まとめ

のどの違和感は、原因が多岐にわたります。普通の風邪のこともありますし、クラミジア・淋菌・梅毒・ヘルペスなど性感染症のこともあります。症状の軽さは、性感染症の有無の目安にはなりません。

「オーラルセックスをした」「のどが少し変」「性感染症が心配」という方は、ぜひ気軽に検査にいらしてください。調べてみないとわからないことは、多い。それが性感染症というもので、私は日々そう感じながら診療しています。


参考文献

  1. Templeton DJ, et al. “Prevalence of Chlamydia trachomatis in the pharynx and rectum.” Sex Transm Infect. 2010;86(7):551-556.
  2. CDC. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep. 2021;70(4):1-187.
  3. Unemo M, et al. “Gonorrhoea.” Nat Rev Dis Primers. 2019;5(1):79. (IF: ~50)
  4. WHO. Global Action Plan to Control the Spread and Impact of Antimicrobial Resistance in Neisseria gonorrhoeae. Geneva: WHO; 2012.
  5. 国立感染症研究所. 「梅毒 感染症発生動向調査 2023年速報値」IDWR. 2024.
  6. Looker KJ, et al. “Global estimates of prevalent and incident herpes simplex virus type 2 infections in 2012.” PLOS ONE. 2015;10(1):e114989.
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