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「寝不足はどこまで体に悪い?」精神科医が死亡リスクと合併症の関係を正直に解説|新宿 心療内科 シティライトクリニック 心とからだ

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「睡眠不足なんて、ただの寝不足でしょ?」——外来で不眠の相談を受けていると、そんな空気を感じることがあります。仕事で忙しく、眠る時間を削るのは仕方ない、体力でカバーできる、と。

正直に言うと、私も以前はどこかで「まあ、寝なくても死にはしないだろう」くらいに軽く考えていた時期がありました。ですが、睡眠と死亡リスク・合併症についての研究を調べ直してみると、想像していたよりもずっとはっきりとしたデータが積み上がっていることに気づかされました。今回は、その内容のお話です。

睡眠時間と死亡リスクの関係を示すU字型グラフのイラスト

「寝れば寝るほど良い」わけではない——U字型の関係

睡眠時間と死亡リスクの関係を調べた研究をまとめると、アルファベットの「U」のような形を描きます[1]。短すぎる睡眠はもちろんリスクを高めるのですが、実は長すぎる睡眠でも死亡リスクは上がっていく。いちばんリスクが低いのは、だいたい7〜8時間あたりです。

これは診察の場でも、少し意外そうな顔をされるポイントです。「休みの日にたくさん寝だめしておけば安心」と思っている方も多いのですが、寝すぎもまた体からのシグナルであることが少なくありません。ただし今回の主眼は、多くの方に当てはまりやすい「短い睡眠」の側です。ここから先は、睡眠不足がどんな形で体に影響していくのかを、具体的に見ていきます。

短い睡眠が引き金になる、いくつかの体の変化

短い睡眠が続くと、体にはいくつかの変化が積み重なっていくことがわかっています。

  • 心血管疾患——心筋梗塞や脳卒中といった病気のリスクが、睡眠時間が短い群で高くなる傾向が報告されています[1]
  • メタボリックシンドローム——内臓脂肪の蓄積に、高血圧・高血糖・脂質異常が重なった状態のリスクが上がることが、複数の研究で示されています[2]
  • 肥満——短い睡眠時間の人ほど、体重が増えやすい傾向があること
  • 糖尿病——7時間睡眠を基準にすると、それより睡眠が短くなるほど2型糖尿病の発症リスクが段階的に高くなることが、報告されています[3]
  • 高血圧——睡眠時間5時間以下の人は、7時間睡眠の人と比べて高血圧のリスクがおよそ1.6倍という報告があります[4]。「1.5倍程度」という数字、決して小さくはないと感じられるのではないでしょうか

ひとつひとつは「かもしれない」レベルの話に聞こえるかもしれませんが、これだけの項目が重なって報告されているというのは、それなりに重く受け止めたほうがよいサインです。

睡眠不足と高血圧・糖尿病・メタボリックシンドローム・肥満・心血管疾患のリスクを示す図解イラスト

なぜ、たかが睡眠不足でここまで体に響くのか

ここまで読んで、「なぜ眠らないだけで、そんなに色々な病気につながるのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。理由として考えられているのは、大きく3つです。

ひとつめは、交感神経の過剰な働きです。本来、夜は副交感神経が優位になり、体が休息モードに切り替わる時間帯です。ところが睡眠不足が続くと、この切り替えがうまくいかず、体が緊張・興奮した状態のまま夜を過ごすことになります。血圧や心拍数が下がりきらない状態が続くわけです。

ふたつめは、炎症性サイトカインの放出です。サイトカインというのは、体の中で炎症の情報をやり取りする物質のことですが、睡眠不足の状態が続くと、この炎症に関わる物質が増えることが確認されています。実際に、40時間の断眠を行った健康な成人を対象にした研究では、炎症マーカーであるIL-6や、血管の内側の細胞が活性化したことを示す物質が増加していたと報告されています[5]

三つめは、血管の内皮機能不全です。血管の内側の壁(内皮)は、本来しなやかに広がったり縮んだりして血流を調整する働きを持っています。ところが睡眠不足の状態では、この内皮の働きが乱れ、血管が本来のようにうまく開かなくなることが、同じ研究の中で示されています[5]。血管がしなやかさを失っていく状態が続けば、動脈硬化のような変化につながっていくのも、納得です。

交感神経の緊張、炎症、血管のしなやかさの低下——この3つが少しずつ積み重なって、高血圧やメタボリックシンドローム、心血管疾患のリスクを底上げしていく。そういうイメージを持っていただけると、わかりやすいかもしれません。

睡眠不足による交感神経の緊張・炎症・血管内皮機能不全のメカニズムを示す図解イラスト

持病と睡眠は、お互いに影響し合っている

もうひとつ、外来をしていて実感することがあります。持病の数が多い方ほど、眠りの質に何らかの問題を抱えていることが多い、ということです。高血圧、糖尿病、慢性的な痛み、呼吸器の病気——体のどこかに不調を抱えていると、それが睡眠の妨げになり、逆に睡眠が乱れることで、その不調がさらに悪化しやすくなる。悪循環と言うか、両方向に影響し合っている感覚があります。

当院に通われているある方のケースを、少しだけご紹介します。もともと血糖値が上がり気味の方で、内科に通いながら不眠についても相談したいと来院された方でした。話を伺っていくと、寝つきの悪さそのものよりも、夜間に何度も目が覚めてしまうことが悩みの中心だとわかりました。並行して内科での血糖コントロールが少しずつ安定してきた時期に、ご本人から「気がついたら夜中に目が覚める回数が減っていた」という話が出てきたことがあります。因果関係を単純に語ることはできませんが、体の状態を整えることが、結果として睡眠の質にも良い影響を及ぼす可能性はあるのだろうと感じた出来事でした。

逆に言えば、「眠れないから睡眠薬だけをどうにかしてほしい」という相談を受けたときも、私たちはその背景に他の身体的な問題が隠れていないかを、あわせて考えるようにしています。睡眠だけを切り離して考えるのではなく、体全体の状態とセットで見ていく、という発想です。

まとめ——睡眠は「軽く見てよいもの」ではない

今回お伝えしたかったのは、睡眠時間は「寝すぎ」「寝なさすぎ」のどちらも避けたほうがよく、特に短い睡眠は、心血管疾患・高血圧・メタボリックシンドローム・肥満・糖尿病といった、将来にわたる体の負担につながる可能性があるということです。その背景には、交感神経の緊張、炎症、血管のしなやかさの低下という、体の中で静かに進んでいく変化があります。

「たかが寝不足」と片づけてしまうには、少しもったいない話だと、私は思います。もちろん、忙しい毎日の中で睡眠時間を理想通りに確保するのは簡単ではありません。それでも、まずは今の自分の睡眠時間や眠りの質に、少しだけ意識を向けてみてほしいと思います。

当院(シティライトクリニック 心とからだ・新宿)では、不眠のご相談はもちろん、その背景にある体の状態も含めて、一緒に整理しながら診察を行っています。「寝不足が続いているけれど、何科に相談すればいいかわからない」という段階でも構いません。どうぞお気軽にご相談ください。


参考文献

  1. Yin J, Jin X, Shan Z, et al. Relationship of Sleep Duration With All-Cause Mortality and Cardiovascular Events: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies. J Am Heart Assoc. 2017;6(9):e005947. https://doi.org/10.1161/JAHA.117.005947
  2. Hua J, Jiang H, Wang H, Fang Q. Sleep Duration and the Risk of Metabolic Syndrome in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Neurol. 2021;12:635564. https://doi.org/10.3389/fneur.2021.635564
  3. Shan Z, Ma H, Xie M, et al. Sleep Duration and Risk of Type 2 Diabetes: A Meta-analysis of Prospective Studies. Diabetes Care. 2015;38(3):529-537. https://doi.org/10.2337/dc14-2073
  4. Wang Y, Mei H, Jiang YR, et al. Relationship between Duration of Sleep and Hypertension in Adults: A Meta-Analysis. J Clin Sleep Med. 2015;11(9):1047-1056. https://doi.org/10.5664/jcsm.5024
  5. Sauvet F, Leftheriotis G, Gomez-Merino D, et al. Effect of Acute Sleep Deprivation on Vascular Function in Healthy Subjects. J Appl Physiol. 2010;108(1):68-75. https://doi.org/10.1152/japplphysiol.00851.2009

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