クリニックからのお知らせ
ADHDの薬を飲んでも「効いている気がしない」と感じたら見直したい3つの視点
【心療内科・メンタルクリニックも診療中】
不眠・うつ・ADHD・発達障害など、当日予約・夜22時まで対応。
患者さんに、「お薬、ちゃんと飲めていますか」と尋ねると、たいてい「飲んでます」という答えが返ってきます。その後に続く「でも、あんまり変わらない気がして」という一言…
ADHDの治療薬——コンサータ(メチルフェニデート)やストラテラ(アトモキセチン)——とても分かりやすい働きをする薬です。しかし、「治らない」「効いている気がしない」と感じてしまう方が多いです。今日は、その理由と、薬を「使いこなす」ためのコツについてお話ししたいと思います。
ADHDの薬は、実際には何をしてくれているのか
コンサータの主成分であるメチルフェニデートは、脳内でドパミンの再取り込みを妨げることで、細胞外のドパミン濃度を高めます。治療域の量であっても、メチルフェニデートはヒトの脳内で細胞外ドパミン濃度を有意に増加させることが確認されています(Volkow ND, et al. J Neurosci. 2001)。一方、ストラテラの主成分アトモキセチンは、主に前頭前野でノルアドレナリンの再取り込みを妨げる薬で、前頭前野におけるノルアドレナリンおよびドパミンの細胞外濃度を高めることが動物実験で示されています(Bymaster FP, et al. Neuropsychopharmacology. 2002)。
作用する神経伝達物質の比率や脳内での働き方は、この2つの薬で少し異なります。細かい薬理学的な違いや、ご自身の用量がどう調整されているかは、実際に処方を受けている主治医に確認していただくのが一番です。ただ、大枠として言えるのは、どちらも「衝動を抑える」「注意を持続させる」ための脳の土台を整える薬だということです。実際、これらの薬を服用することで、頭の中の情報が整理されやすくなり、物事の輪郭が急にはっきりする——そんな「解像度が上がる」ような感覚を語ってくれる患者さんは多いですし、忘れ物が減った、衝動的な発言が減った、という変化もよく耳にします。
それでも「治らない」と感じてしまうわけ
ここで一つ、知っておいていただきたいことがあります。ADHD治療薬の継続率は、決して高くありません。ADHD治療薬に関する系統的レビューでは、治療の中断理由として副作用と並び「効果を実感できないこと」が挙げられています。(Gajria K, et al. Neuropsychiatr Dis Treat. 2014)。
私はこの「効果を実感できない」という感覚には、薬そのものの問題だけでなく、「効いている感覚の受け取り方」の問題があると感じています。薬はコアとなる衝動性・不注意には効いても、それを日々の生活の中で「なるほど、効いているな」と自覚できるかどうかは、また別の話だからです。ここから、私が診察の中でよくお伝えしている3つのコツをご紹介します。
コツ① 効いている感覚を、自分から「感じにいく」
服薬してしばらくすると、頭がすっと覚醒するような、輪郭がはっきりするような感覚があるはずなのですが、この感覚をうまく自覚できないまま「特に何も感じない」「効いていないと思う」と判断してしまう方、多いのではないでしょうか?
以前、コンサータを数週間飲んでも「別に変わらない」と仰っていた方がいました。ところが「効いている時間帯とそうでない時間帯で、作業のはかどり方に差はありませんか」と尋ねてみると、「言われてみれば、午前中はメールの返信がすらすら書けるけれど、夕方はまた元通りぐちゃぐちゃになる」と教えてくれました。効果は確かにあったのですが、「効いている」という感覚そのものを、意識して探しにいっていなかっただけだったのです。
薬の効果は、待っているだけでは自覚しにくいことがあります。「今、頭が働いているか」「集中しやすくなっているか」を、自分から確かめにいく——そんな積極的な姿勢が、最初の一歩になります。
コツ② 注意の「ピント」を合わせ、意識的にずらす
薬が効き始めたら、次に意識してほしいのが「注意のピント合わせ」です。カメラのレンズがピントを合わせる対象を選ぶように、「今はこの作業に集中している」と、注意の向き先を自分ではっきり意識してみてください。
そして、一つの作業が終わったら、次の作業へとピントの対象を意識的にずらしていく——この「スイッチング」の操作を、能動的に行うことが大切です。薬は集中する土台を作ってくれますが、その集中をどこに向け、いつ切り替えるかまでは、薬が自動でやってくれるわけではありません。ぼんやりと「集中しやすくなった気がする」で終わらせず、「今、ここにピントを合わせている」「次はこちらに移そう」と能動的に舵を取る感覚を持てるようになると、薬の効果が生活の実感につながりやすくなると感じています。
コツ③ 過集中による疲労を、見過ごさない
もう一つ、意外と見過ごされがちなのが「過集中」です。ADHDのある方は過集中を頻繁に経験しやすく、ある調査では対象者の約7割が数時間から数日間続く過集中を報告しています(Oroian BA, et al. Eur Psychiatry. 2025)。薬によって集中力が上がる分、一つのことにのめり込みすぎて、気づかないうちに心身をすり減らしてしまうことがあるのです。
過集中それ自体は悪いことではありません。ただ、「気づいたら夕方で、食事も水分も取らずに何時間も同じ作業をしていた」というようなことが続くと、翌日以降の調子を崩す原因になります。薬の効果を「集中できたかどうか」という一点だけで評価せず、「そのあと、どれくらい疲れているか」まで含めて自分の状態を眺める習慣を持つことが、長く薬と付き合っていくうえで欠かせません。
薬は土台、使いこなし方はコツ次第
ここまでお話ししてきた3つのコツ——効果を感じにいくこと、注意のピントを合わせてずらすこと、過集中による疲労を見過ごさないこと——は、どれも薬そのものの効果を変えるものではありません。ただ、薬が作ってくれた「土台」の上で、どう注意を使い、どう休むかという部分は、患者さん自身が意識して身につけていく技術だと、私は思っています。
もし今、薬を飲んでいるのに「治らない」「効いている気がしない」と感じているなら、まずは自己判断で服薬をやめる前に、その感覚を主治医に率直に伝えてみてください。用量や薬の種類が合っていない可能性もありますし、今日お話ししたような「使いこなし方」の工夫だけで、実感が大きく変わることもあります。当院でも、そうした細かい感覚のすり合わせを一緒に行いながら、治療を進めています。
参考文献
- Volkow ND, Wang GJ, Fowler JS, et al. Therapeutic doses of oral methylphenidate significantly increase extracellular dopamine in the human brain. J Neurosci. 2001;21(2):RC121.
- Bymaster FP, Katner JS, Nelson DL, et al. Atomoxetine increases extracellular levels of norepinephrine and dopamine in prefrontal cortex of rat: a potential mechanism for efficacy in attention deficit/hyperactivity disorder. Neuropsychopharmacology. 2002;27(5):699-711.
- Gajria K, Lu M, Sikirica V, et al. Adherence, persistence, and medication discontinuation in patients with attention-deficit/hyperactivity disorder – a systematic literature review. Neuropsychiatr Dis Treat. 2014;10:1543-1569.
- Oroian BA, Nechita P, Szalontay A. Hyperfocus in ADHD: a misunderstood cognitive phenomenon. Eur Psychiatry. 2025.
シティライトクリニック 心とからだ|新宿 西武新宿駅徒歩1分
こころのお悩み、まずはご相談ください
不眠・うつ・不安・ADHD・発達障害|当日予約・即日診断書・夜22時まで診療
WEB予約はこちら →