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精神病院に入院したらどうなる?家族の不安に精神科医が答えます|新宿 心療内科 シティライトクリニック 心とからだ

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「精神病院」と聞いて、みなさんはどんな場所を思い浮かべるでしょうか。鉄格子のはまった窓、薄暗い廊下、大きな声が響く病棟——そんなイメージでしょうか?。実際、精神科単科病院という場所は、多くの人にとってなじみが薄く、テレビドラマや噂話の中でしか触れたことがないでしょう。

今日は、その「精神病院」という場所について、精神科医として知っていることを、お話ししてみようと思います。

精神科病院の中庭で患者と看護師が穏やかに過ごしているイラスト

「怖い場所」という先入観と、学生時代に感じた拍子抜け

私が医学生の頃、大学附属の精神科単科病院で実習をしました。

記憶はもう曖昧になってますが、むしろ静かで、時間の流れがゆっくりとしている印象を受けたのを覚えてます。ただ、そこにあったのは、恐怖ではなく、どちらかというと「のほほん」とした空気でした。患者さんたちがデイルームで新聞を読んだり、看護師さんと世間話をしたり——そんな、拍子抜けするほど穏やかな日常が広がっていたのです。

ひょっとしたら、実際に精神科病院を訪れたことがある方の多くも、似たような感覚を持たれるのではないかと思います。「怖い場所」という言葉から連想されるものと、そこにある現実との間には、案外大きな隔たりがあるのです。

精神科病院にはどんな役割があるのか——入院が必要になる場面とは

とはいえ、精神科単科病院が担っている役割は、決して単純なものではありません。大きく分けると、次のような機能を持っています。

  • 急性期病棟:幻覚や妄想、強い不安や興奮など、症状が最も激しい時期に、集中的な治療を行う場で、医療者が常時そばにいる環境で、薬物療法や休息を通じて、まず症状の波を落ち着かせることを目指す場所
  • 慢性期病棟:症状の波が落ち着いたあとも、生活のリズムを整えたり、社会復帰に向けたリハビリテーションを続けたりするための、比較的長い期間の療養の場
  • 依存症治療:アルコールや薬物への依存から離れるための、専門的なプログラムを提供するところ。自宅にいると、どうしても依存の対象から距離を取りにくいため、環境ごと切り替えることに意味があります
  • ストレスケア病棟:本人の意思による「任意入院」を基本とした病棟で、いわゆる「閉じ込められる」精神科のイメージとは、かなり性質が異なります

当院に相談にいらっしゃる方の中にも、「家族を入院させたら、もう元の生活に戻れないのではないか」という強い不安を抱えている方がいます。ある時、ご家族が疲弊しきった様子で来院され、本人の状態を詳しく伺っていくと、実は入院という選択肢そのものへの誤解が、決断を先延ばしにさせていたということがありました。話を整理していくと、必要とされていたのは、まさにこのストレスケア病棟のような、環境を一時的に切り替える場だったのです。

「閉じ込められる」わけではない——ストレスケア病棟という選択肢

ストレスケア病棟は、自由診療の部分を含み費用がかかることが多く、また入院期間や制度の詳細は病院によって異なりますが、基本的には本人が納得したうえで入院する「任意入院」が前提になります。外出や面会についても、閉鎖病棟に比べて自由度が高いことが一般的です。

その最大の意味は、日常生活からいったん距離を置き、環境をフラットな状態にリセットできることにあります。自宅や職場にいたままでは、何がストレスの引き金になっているのか、本人自身も、周囲の人も、なかなか見えてこないことが多いです。環境を切り離すことで、初めて「何が負荷になっていたのか」が見えてくることがあるのです。

精神科病院が担う急性期治療・慢性期治療・依存症治療・ストレスケア病棟の4つの役割を示す図解イラスト

それでも知っておきたい、保護室と行動制限という現実

ここまで、精神科病院の穏やかな一面や、任意入院を基本とするストレスケア病棟についてお話ししてきました。ただ、正直な情報として、負の側面にも触れておく必要があると思っています。

精神科病院には、症状が非常に激しく、本人や周囲に危険が及ぶおそれが著しく高いと判断された場合に用いられる「保護室」が実際に存在します。精神保健福祉法第37条に基づく厚生労働大臣告示(昭和63年厚生省告示第130号)では、隔離や身体拘束は、本人または周囲の安全を守るために他に方法がないと判断される場合にのみ、必要最小限の範囲で行うべきものと定められています。制度上は厳格な要件が設けられているものの、施設によっては環境が薄暗く、居心地が良いとは言い難いところもあるのが実情です。

また、こうした行動制限の運用をめぐっては、日本弁護士連合会が2025年に、身体的拘束及び隔離の要件について、より厳格な解釈と運用を求める意見書を公表しているように、人権上の課題として指摘され続けている面もあります。これは、特定の病院や医療者を一方的に非難するための話ではありません。限られた人員体制の中で、安全を守ろうとする現場の努力と、患者さんの権利をどう両立させるかという、構造的な課題として受け止める必要があるのです。

なぜ精神科病院は必要とされ続けてきたのか

では、こうした課題を抱えながらも、精神科病院がこれまで存在し続けてきたのはなぜでしょうか。理由の一つに、「症状が落ち着いても、自宅に帰れない」「家族や社会が本人を受け入れる準備ができていない」という現実があります。

これは、病院側だけの都合で説明できるものではありません。むしろ、地域社会や家族が抱えきれない部分を、精神科病院が間接的に引き受けてきた、という側面があるのです。厚生労働省の患者調査によれば、精神疾患による入院患者数は平成14年の約34.5万人から平成29年には約30.2万人へと減少しており、これは「入院医療から地域生活への移行」という国の政策方針が進められてきたことを反映しています。裏を返せば、それだけ長い間、入院という形が社会の受け皿として機能してきた、ということでもあります。

これから精神科医療はどう変わっていくのか

近年、統合失調症をはじめとする精神疾患の治療は、薬物療法の進歩や早期介入の広がりとともに、入院に頼らずに地域で生活を続けられるケースが増えてきているとされています。それに伴い、精神科単科病院の経営環境は厳しさを増しており、今後、病床の縮小や病院同士の再編が進んでいくでしょう。

これは、一面では寂しさを伴う変化かもしれません。ただ、長期入院が前提だった時代から、できる限り地域や自宅で暮らしながら治療を続けられる時代へと移り変わっていくのだとすれば、それは決して悪いことではなく、むしろ望ましい方向への変化です。

迷ったときは、入院の前にご相談ください

「精神病院」という言葉には、まだまだ強いイメージが付きまとっています。ただ、実際にそこにあるのは、恐怖の対象というよりも、急性期・慢性期・依存症治療・ストレスケア病棟といった、それぞれの目的を持った治療の場です。同時に、保護室や行動制限といった、知っておくべき現実も存在します。

当院は入院施設を持つ病院ではありませんが、「そろそろ入院を考えたほうがいいのだろうか」「でも、精神病院という響きが怖い」——そうした迷いの段階でのご相談も、外来診療の中でよくお受けしています。ご本人はもちろん、ご家族だけでの相談も可能です。入院が本当に必要な状態なのか、それとも外来治療やストレスケア病棟のような選択肢で対応できるのか、気楽にご相談くださいませ。

医師が患者の家族と穏やかに話し合う診察室のイラスト

参考文献

  • 厚生労働省「精神保健医療福祉の現状」精神保健医療福祉に関する資料(患者調査に基づく入院患者数の推移)
  • 精神保健福祉法第37条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(昭和63年4月8日厚生省告示第130号)
  • 日本弁護士連合会「精神保健福祉法上の身体的拘束及び隔離の要件の厳格な解釈及び運用を求める意見書」2025年1月23日
  • 厚生労働省「医療保護入院制度について」精神保健福祉法における入院形態に関する資料

シティライトクリニック 心とからだ|新宿 西武新宿駅徒歩1分

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