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「薬を飲んだのに、余計に不安になった気がする」——精神科医が教える頓服と定期薬の話|新宿 心療内科 シティライトクリニック 心とからだ

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今日は薬の中でも臨時で飲む薬<頓服>のお話です。

精神科で処方される薬は、大きく分けて「頓服(頓用)」と「毎日決まった時間に飲む薬」の2種類があります。今日は、この基本的だけれど案外きちんと説明されにくい区別と、頓服として使われる薬にまつわる、少し専門的だけれど知っておいてほしい注意点についてお話ししようと思います。

お薬手帳と処方箋を見ながら考え込む人のイラスト

頓服(頓用)とは、そのとき症状を抑えるための薬

頓服(頓用)とは、症状が強く出たとき・つらいときに、そのつど一時的に症状を抑えるために飲む薬の使い方を指します。毎日決まった時間に飲むものではなく、「不安時」「不眠時」といった、あらかじめ決められた状況のときにだけ使います。

処方箋には「頓用:不安時 1回1錠」のように、どんな場面で・1回にどれだけ・何回分までという指示が具体的に書かれています。この指示の範囲を超えて、なんとなく不安だからと頻繁に使ってしまうと、この後お話しする落とし穴にはまりやすくなります。

「毎日飲む薬」の正式な呼び方——定期薬

一方、毎日決まった時間に飲み続ける薬は、一般に「定期薬」と呼ばれます。処方箋では「1日3回 毎食後」「1日1回 就寝前」のように、頓服とは記載のされ方そのものが違います。

頓服が「そのときの症状をその場で抑える」ことを目的にしているのに対して、定期薬は「体の中の薬の量を一定に保ち続けることで、じっくり効果を安定させる」ことを目的にしています。この目的の違いが、この先お話しする内容すべての土台になります。

精神科でよく使われる頓服薬

精神科の頓服としてよく用いられるのは、ロラゼパム、アルプラゾラム、ブロマゼパムといったベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。加えてエチゾラムもよく使われますが、これは化学構造としては厳密には「チエノジアゼピン系」に分類される薬です。ただし、ベンゾジアゼピン受容体に結合して同じような働きをするため、臨床の現場ではベンゾジアゼピン系の薬剤とほぼ同じグループとして扱われることがほとんどです。

不眠時の頓服としては、ゾルピデムなどもよく使われます。ゾルピデムは名前の響きからベンゾジアゼピン系と誤解されがちですが、実際には「非ベンゾジアゼピン系(Z薬)」という異なるグループの睡眠薬です。

また、抗精神病薬であるリスペリドンが、強い不安やいらいら(易刺激性)を鎮める目的で使われることもあります。ただし公的に適応が認められているのは、主に5歳以上18歳未満の小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に対してです。成人の外来で「いらいらしたとき」の頓用としてリスペリドンを使うかどうかは、診断や病状によって医師の判断が分かれる部分であり、誰にでも一律に処方されるものではないことは、知っておいていただきたいと思います。

頓服に「効き始めが早い薬」が選ばれやすい理由

頓服は「必要なときに、すぐ効いてほしい」薬です。そのため、飲んでから血中濃度が最高値に達するまでの時間——専門的には「Tmax」と呼びます——が短く、効果の立ち上がりが早い薬が選ばれやすい傾向があります。実際、エチゾラムのTmaxはおよそ1.5時間、ロラゼパムやアルプラゾラムはおよそ2時間、ゾルピデムに至っては1時間もかからずに血中濃度がピークに近づくとされています。「頓服には効き始めの早い薬が向いている」というのは、おおむね正しい理解だと思います。

ただ、ここで一つ整理しておきたいことがあります。「効き始めの早さ(Tmax)」と、「効果がどれくらい続くか(半減期)」は、まったく別の指標だということです。効き始めが早いことと、効果が長持ちすることは、必ずしもイコールではありません。

頓服と定期薬の血中濃度の変化を対比した図解イラスト

作用時間が短いことの落とし穴——反跳現象

頓服でよく使われるベンゾジアゼピン系の薬は、半減期が短め〜中程度のものが多く、効果が切れるのも比較的早いという特徴があります。この「切れの早さ」自体は頓服として使いやすい面もあるのですが、一方で血中濃度が急激に下がることで、もともとの症状——不安や不眠——が、薬の効果が切れたタイミングでかえって強くぶり返してしまうことがあります。これを「反跳現象(リバウンド)」と呼びます。

作用時間の短い、あるいは中程度のベンゾジアゼピン系薬剤を使用しているパニック症の患者では、次の服薬までの間に不安症状がかえって強く現れる「反跳性不安」が起こりうることが報告されています(Herman JB, et al. J Clin Psychiatry. 1987)。

以前、不安時の頓服としてエチゾラムを処方していた方から、「薬が切れる頃になると、前よりそわそわして落ち着かなくなる」という訴えを聞いたことがあります。よく話を聞いてみると、その方は「効果が切れる=また不安が悪化する」と感じ、切れる前に次の1錠を飲む、というように少しずつ服用間隔が短くなっていました。薬そのものが悪いというより、反跳現象という現象を知らなかったために起きていた、飲み方のすれ違いだったのだろうと思います。

反跳現象が起きると、「薬が切れたらかえって調子が悪くなった」と感じてしまい、必要以上に頻回に頓服を使ってしまったり、不安になって毎日欠かさず飲むようになってしまったりすることがあります。こうした使い方は、依存のリスクを高めてしまう可能性もあるため、注意が必要です。

処方時に確認しておきたい3つのこと

こうした落とし穴を避けるために、薬を処方される際には、次の3点を意識して確認していただくことをおすすめしています。

まず、その薬が頓服なのか、定期薬として毎日飲むものなのかを、医師にはっきり確認すること。次に、頓服の場合は「どんなときに」「1回何錠」「1日何回まで、あるいは合計何回分まで」飲んでよいかを具体的に聞くこと。そして、処方箋を受け取ったその場で用法を読んで確認し、薬局でも薬剤師に改めて確認する習慣を持つことです。「なんとなく渡された薬だから」とあいまいなまま飲み始めず、確認する一手間が、思わぬ誤った使い方を防いでくれます。

定期薬は、飲み続けて初めて効果が出る薬です

ここまでは頓服の話でしたが、最後に定期薬について、もう一つ知っておいてほしいことがあります。定期薬は、毎日一定の時間・量を飲み続けることで、体内の血中濃度が一定の範囲で安定する「定常状態」という状態に達して、初めて本来期待される効果を発揮する薬だということです。

薬物動態学では、血中濃度がほぼ定常状態に達するまでにかかる時間は、その薬の半減期のおよそ4〜5倍とされています(Rowland M, Tozer TN. Clinical Pharmacokinetics and Pharmacodynamics. 4th ed. 2010)。つまり定期薬は、飲み始めてすぐに効果を評価できるものではなく、ある程度の期間、指示どおりに飲み続けて初めて、本来の効果が判断できるようになる薬なのです。「飲んでいるのに変わらない」と感じてすぐに自己判断でやめてしまうと、実はまだ体の中の薬の量が安定していないだけ、ということも少なくありません。

医師が処方薬の飲み方を患者に説明している診察室のイラスト

頓服と定期薬、それぞれの役割を理解して使う

頓服は「そのときの症状をその場で抑える」薬、定期薬は「じっくり効果を安定させる」薬——この2つは、そもそも目的が違います。どちらが良い悪いという話ではなく、それぞれの役割を理解したうえで、指示された使い方を守ることが、安全で効果的な治療につながります。

参考文献

  • Herman JB, Brotman AW, Rosenbaum JF. Rebound anxiety in panic disorder patients treated with shorter-acting benzodiazepines. J Clin Psychiatry. 1987;48(Suppl):22-28.
  • Rowland M, Tozer TN. Clinical Pharmacokinetics and Pharmacodynamics: Concepts and Applications. 4th ed. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins; 2010.
  • ヤンセンファーマ株式会社. 抗精神病剤「リスパダール®」小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の適応追加承認取得. プレスリリース. 2016年2月29日.
  • 各薬剤の添付文書・インタビューフォーム(PMDA医療用医薬品情報検索)に基づくTmax・半減期等の薬物動態情報。

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