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PTSDって何?診断基準をわかりやすく解説|新宿 心療内科 シティライトクリニック 心とからだ
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PTSDって聞いたことありますか。おそらく、ほとんどの方が「はい」と答えると思います。「トラウマ」という言葉も、いまではすっかり日常会話に溶け込みました。「あの一言がトラウマになった」「フラッシュバックする」というふうに、わりと軽い調子で使われることも増えています。
今日から何回かに分けて、このPTSD(Post Traumatic Stress Disorder/心的外傷後ストレス障害)についてお話ししていこうと思います。初回のテーマは、PTSDのおおまかな輪郭と、その診断についてです。
診療の現場でとてもよく聞く「これってPTSDですか」という相談
精神科の外来をやっていると、実によく遭遇する相談があります。「交通事故にあってから、なんだか調子が悪い」「彼氏に暴力を振るわれて、それ以来つらい」「職場の上司にひどく怒られてから、会社に行けなくなった」——そういう経験をされた方が、「これはPTSDではないでしょうか」「診断書を出してもらえませんか」と相談にいらっしゃいます。
まず断っておきたいのですが、これらはどれも、間違いなくつらく、大変な出来事です。そのつらさそのものを疑うつもりは一切ありません。正直に言うと、こういう場面では医師としても悩みます。目の前の方は本当に苦しんでいて、その苦しみに医学的な名前をつけてほしいと思っている。その気持ちはよくわかるのです。
ただ、精神科医として正直にお伝えすると——これらのケースの多くは、医学的にはPTSDと診断されません。あいまいに「つらかったから、たぶんPTSD」と決めてしまうのではなく、はっきりとした診断上の条件に照らして考える必要があります。
PTSDと診断するには、4つの症状がそろっている必要がある
精神科医が診断のときに確認するのは、大きく分けて次の4つの症状群です。ひとつでも欠けていれば、それだけではPTSDとは言えません。
- 侵入症状:出来事が、望んでもいないのに何度も鮮明によみがえってくる。フラッシュバックや、その出来事に関する悪夢が繰り返される状態です
- 回避症状:出来事を思い出させる人・場所・状況を、意識的・無意識的に避けるようになる。事故のあった道を通れなくなる、加害者を連想させる人と会えなくなる、といった形で現れます
- 認知と気分の陰性の変化:物事の受け止め方が否定的になり続ける。「自分が悪かったんだ」と自分を責め続けたり、以前は楽しめていたことに何も興味が持てなくなったりします
- 覚醒度・反応性の著しい変化:常に神経が張りつめている状態が続く。ちょっとした物音にも過剰に驚く、眠れない、いらだちやすい、集中できない、といった変化です
そして、PTSDと診断するには、この4つの症状群がひととおりそろっていて、かつそれが1か月以上続いていることが前提になります。事故や暴力の直後に強い動揺があること自体は、むしろ自然な反応です。問題は、それがどんな形で、どれくらいの期間、どんな症状として持続しているかなのです。
では、あの相談の多くは何なのか——急性ストレス反応・適応障害
では、「交通事故にあった」「暴力を振るわれた」「上司に怒られた」という方々の多くは、いったい何にあたるのか。多くは「急性ストレス反応」、あるいは「適応障害」と呼ばれる状態です。
急性ストレス反応は、出来事の直後から侵入症状や回避症状、気分の落ち込みなどが強く出るものの、通常は1か月以内に自然と軽快していく状態です。一方、適応障害は、人間関係のトラブルや仕事上の叱責など、日常生活の中でも起こりうる程度のストレスをきっかけに、気分の落ち込みや不安、行動の変化が生じるものを指します。命の危険を感じるような出来事が前提のPTSDとは、そもそもの成り立ちが少し違います。
ここで、日々の診療のなかで感じていることをひとつお話しします。ひょっとしたら意外に思われるかもしれませんが、PTSDのある方は、必ずしも「つらいです」「苦しいです」とはっきり言葉で訴えるとは限りません。「こんなことでつらいと言うのは恥ずかしい」と感じて、口では「大丈夫です」と話す方も少なくないのです。
それでも、よく話を聞き、様子を見ていくと、出来事に関わる場所をさりげなく避けていたり、ふとした瞬間にフラッシュバックらしき反応が見られたりと、行動や表情のうえにはっきりとした苦痛の跡が見て取れます。一方、急性ストレス反応や適応障害の場合は、そうした行動面での顕著な変化が比較的乏しいことが多い——これが、両者を見分けるひとつの手がかりになっています。
似ているようで違うもの——悲嘆・遷延性悲嘆症にも少しだけ触れておく
もうひとつ、PTSDと混同されやすいものに「悲嘆(グリーフ)」があります。大切な人を亡くしたときの深い悲しみは、それ自体は自然な心の反応です。ただ、その状態が非常に長く、生活に大きな支障をきたすほど続く場合には「遷延性悲嘆症」という診断名が使われることもあります。これはPTSDとはまた別の考え方をする状態で、鑑別が必要になる場面もあります。この点は、また回をあらためて詳しくお話ししようと思います。
診断名より先に、伝えておきたいこと
今日お伝えしたかったことは、シンプルです。「つらい出来事にあった=PTSD」ではありません。PTSDと診断されるには、侵入症状・回避症状・認知や気分の陰性の変化・覚醒度と反応性の変化という4つの症状群がそろっている必要があります。
とはいえ、これは「あなたはPTSDではないから、我慢してください」という話では決してありません。急性ストレス反応であっても、適応障害であっても、つらさそのものは本物です。診断名がどうであれ、つらさが続いているなら、一度専門医に相談してみてほしいと思います。
このシリーズでは、今後もPTSDについて、もう少し掘り下げてお話ししていく予定です。次回のテーマはまだ固めていませんが、今回触れた鑑別の続きや、治療の考え方などを扱えればと考えています。
当院(シティライトクリニック 心とからだ・新宿)では、こうしたつらい体験について、じっくりお話をうかがったうえで、状態の整理や今後の対応を一緒に考えています。「これはPTSDなのか、それとも別の何かなのか」——そのこと自体に迷っている方も、どうぞお気軽にご相談ください。
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